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マイクロソフトがSpartan(スパルタン)とかいうブラウザを作った理由

マイクロソフトIEの次となるブラウザとして、Spartan(スパルタン)を開発しているという噂が流れ、世の中の注目を集めた。

どれだけリテラシーが低い人でも、マイクロソフトの開発しているブラウザ「Internet Explorer」ぐらいは聞いたことがあるだろう。青色の、小文字のeのアイコン。20年近くも続く歴史あるそのブラウザは今、市場における影響力を失い、そしてとうとう変化という判断が迫られることなった。

Internet Explorerの歴史に触れてみよう。登場したのは95年で、ライバルはネットスケープとかいうブラウザだった。機能はIE3あたりでそこそこ良くなってて、CSSJavaScriptも動くしで、敵にはわりかし追い付いてきた。そしてIEは5になって、その優秀さからブラウザの歴史は大きく動くことになった。ActiveXやら独自実装やらで高機能化して、ブラウザの担うべき役割というのを大きく変えた。過去最も有名で、ロングヒットになったIE6も、IE5からさほどかわっていないし、IE5で築いたベースはIE8ぐらいまで流れを引き継いだ。ブラウザの進化に力を入れていなかったという見方も出来るだろう。

それが、GoogleChromeとかいうブラウザを開発するようになって、IEのシェアは一気に低下した。ChromeHTML5という技術を前面に押し出して技術者たちを大いに喜ばせたのだけれど、その効果がコンシューマーに対しても現れてて、人々はIEよりもChromeこそが素晴らしいブラウザだと賞賛するようになった。実はIEはパフォーマンスにおいて、Chromeよりも良い成績を叩き出すのだけれど、いまさらその印象を変えることなんて出来なくなったわけだ。

印象を変えようと乗り出した

マイクロソフトは、大企業の病気に侵されていると言われてもおかしくない。特に代表がバルマーになったあたりからは、技術革新と呼べるようなものはなかなか出てこなかった。少なくともここ最近、Windows XP以上の発明が出てきたようには見えなかった。

IEの開発においても同じで、IE5あたりまではあれだけ先進的で、クールなブラウザだったにもかかわらず、IE9が出てくるまで、ほとんどと言っていいほど進化がなかった。大企業は、時に判断を遅くするし、場合よっては革新的なアイデアに対する決定を鈍らせたりする。当時のIEはこのあたりの傾向が特に顕著だったように見える。

IE6もリリースされた直後は、素晴らしいブラウザだと賞賛された。当時はまだ、ダイアルアップ接続なんかが主流の時代だったわけで、インターネットを楽しむ上でIE6は素晴らしいパフォーマンスを発揮した。それが、回線は光になったり、スマートフォンなんかが出てきた時代になっても、人々はIE6を利用した。時代は変わったのに、IE6を使い続ける人が多かったのだ。それゆえに、IEの印象を最悪のものに変えてしまったわけだ。

マイクロソフトは2014年4月から、代表をナデラに変えて新体制になった。ナデラはバルマーのような営業畑の人間ではなく、根っからのエンジニアだ。彼はとても積極的に、マイクロソフトの中から技術革新を阻害するものを潰して回っている。

IEは、1つのバージョンに対して最低でも10年のサポートをつけていたのに、ナデラになったとたんその方針は覆された。


企業からの文句は相当あった

コンシューマーからみたら、IEのサポートなんてどうでもいい問題。しかし企業ユースになると話は別で、相当文句を言われた。おいオマエ、10年は面倒見てくれるんじゃなかったのか!?バージョンを上げるには何億も金が必要なんだぞ!責任はとれるんだろうなっ…と。

企業ユーザーはIEのバージョンを上げる上で最大の阻害要因なわけでして、彼らはIEを最新のバージョンでしかサポートできないなんて、運営上、非現実的だったりするわけで。(とはいえ、金融とか大手インフラ系は速攻対応してて、文句行っているのは一部だったりするわけですが…)

マイクロソフトとしても、こうしたユーザの意見は無視しない。一応打開策として、IE11の仮想化機能を将来的に実装すると発表してたりで、ひとまずWindows 7世代はIE11までアップデートすると逃げ道はなんとか用意するよという方向に倒した。マイクロソフトの強みである企業ユースの保護をした。

IEはどうなるの?

結論だけ先に言うとIEはなくなる。別ブランドのSpartan(名前はまだ確定ではない)というブラウザに今後のブランドは委ねられる。Windows 7においてはInternet Explorerのバージョン11を、2020年1月までサポートする予定にはなっているが、最新バージョンであるWindows 8系(8.1/10)はどうもSpartanオンリーでいこうという方針のようだ。

IEの現在の悩みとしては、世の中のWebが今、iPhoneSafariAndroidに特化されつつあることだ。かつてはIEの独自実装が課題になっていたが、モバイル市場で影響力を持てない今は、SafariAndroidに搭載される「WebKit」に特化したサイトばかりとなったことだ。IEだと見られないというモバイルサイトが多かったりするわけだ。そこで今のIE(Spartan)は、WebKitに似せた動きになろうとしている。これから先、ヘタしたらIEであることは全くといっていいほど意識しなくても良くなるかもしれない。

ただ、残念だが、SpartanIEのレガシーな開発スタイルを引き継ぐことになるので、新しい機能の追加が遅れるという従来のIEの問題点を、継承することになるだろう。ChromeFirefoxには開発体制の差で勝てるようには見えない。このあたりをどう克服するのかが気になるところだ。

マイクロソフトはWebを支配できなくなったわけだが、彼らがエコシステムをどのようにコントロールし、Spartanで返り咲くか目が離せない。代表があのやんちゃなナデラになった今、実は数年のうちに実現できるのかもしれない。